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英語圏では「緘黙症」は何と呼ばれているのか

英語では緘黙症をどう呼んでいるのか、言葉の整理をしましょう。英語に関心のない方であれば、今回のお話は退屈かもしれません。

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 場面緘黙症の英語圏での呼称

場面緘黙症は、英語では主に次のように呼ばれています。

現在、正式な呼称は "selective mutism" です。2番目の"SM"というのは略称になります。

3番目の"elective mutism" というのは旧称です。しかし、なぜ呼称が変わったのでしょうか。

アメリカの精神医学会が定めた診断の手引書 Dsm-IV が できるまでの議論をまとめた Dsm-IV Sourcebook に、 このあたりの経緯が書かれています(251ページ)。

* 以下引用 *

It is recommended that the disorder be named selective mutism, because evidence is lacking to support the implication that children with elective mutism have a deliberate preference not to speak.

[ 富重訳(訳の品質は保証しません) ]

この障害を selective mutism と名付けるよう提言します。なぜならば、緘黙症児が意図的に好んで話さないのだという暗示を支持する証拠がないからです。

* 引用終わり *

恥ずかしながら、私は、長年英語を勉強しているくせに "selective" と "elective" の違いが分からないのですが、 何はともあれ "elective mutism" だと「緘黙症児は、自分の意思で話さないことを『選択』しているのだ」という誤解を与えかねない表現だから変わった、ということのようです。

それから、Stephen R. Hooper ほかが1993年に編集した Child Psychopathology PR(Lawrence Erlbaum Associates)によりますと、場面緘黙症は、Adolf Kussmaul という人が1877年にこれを "aphasia voluntaria" と名づけたのが最初なんだそうです。よく分からないのですが、"voluntaria" という語がある以上、やはり自発的に話さないという意味合いがあったのでしょう。

その後、"speech inhibition" "speech shyness" "thymogenic mutism" "functional mutism" "speech avoidance" などと色んな呼称が登場しました。結局のところ、1934年に Moritz Tramer が名づけた "elective mutism" が1994年まで定着したようです。(410ページ)

 全緘黙は "total mutism"

あらゆる場面で緘黙になってしまう全緘黙は、"total mutism" と呼ばれます。

 selective mutism や total mutism ではない mutism

selective mutism や total mutism以外にも、mutism という名のつく症状があります。

いずれも、場面緘黙症とは関係がありません。もっとも、Google で "mutism" と検索すると、ほとんどが "selective mutism" に関するサイトです。

 そもそも mutism, mute とは何なのか

mutism は名詞。mute はその形容詞になります。

Merriam Websters Collegiate Dictionary(第11版)によりますと、mute には "unable to speak : lacking the power of speeh" などの意味があります。要するに話さない、話せないことです。

よくカラオケなど、音量の調整で音を消すことを「ミュート」と言ったりしますが、それは mute という英語からきたものです。

12/17/2005公開、12/06/2006編集


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