
私が子どもの頃、お兄さまお姉さまの間で「タッチ」という野球漫画が流行っていました。
この漫画の中で、和也と達也という双子の兄弟が登場します。弟の和也の方はスポーツ万能、学業優秀ですが、兄の達也は、いまいちぱっとしません。
双子だというのにこの違いは何なのでしょうか。遺伝的なものの差でしょうか、それとも環境の差でしょうか。
一口に双子と言っても、一卵性双生児と二卵性双生児とでは訳が違います。一卵性双生児は、もともと一つの受精卵だったものが分割して成長したものなので、遺伝子はともに100%同じです。一方、二卵性双生児は、遺伝子という面で見れば、別々に生まれた兄弟姉妹と何ら変わりません。
これは面白いですね。遺伝の研究に使えそうです。
実際、この違いを活用した「双生児法」(twin method)という研究方法があります。例えば、場面緘黙症の一卵性双生児(2人)と二卵性双生児(2人)を比較して、前者の状態の差の方が後者のそれよりも小さければ、場面緘黙症は遺伝が関係しているのだろうということになります。
実際、双生児法で場面緘黙症に遺伝が関係しているかどうかが研究されたそうです。結果は、遺伝の関与があるのだろうということだったそうです。この情報のソースは、2000年2月6日に Chicago Tribune という新聞に掲載された記事 "Selective mutism: more than shyness" です。
* 以下引用 *
"Selective mutism appears to be genetically influenced: Studies of twins have shown that identical twins are more likely to share the condition than fraternal twins"
* 引用終わり *
と書かれてあります(genetically:遺伝的に、identical twins:一卵性双生児、fraternal twins:二卵性双生児)。
* * * * * * * * * *
それにしても、場面緘黙児の双子なんてよく見つけて研究できたなと素朴に思います。
世界最大の医学文献データベース medline と、国立情報学研究所の CiNii で調べてみたところ、場面緘黙症の双子の研究はそれぞれ5件、2件見つけることができました。
最も古い研究は、1962年に Mora G などが著した Dynamics and psychotherapy of identical twins with elective mutism. です。このタイトル、邦訳すれば「場面緘黙症状を呈した一卵性双生児の力動と心理療法」ぐらいになるのでしょうか。当時は、場面緘黙症は精神力動という、何やら葛藤のようなものが関係していると考えられていたようです。
最新のものは、2006年4月に Sharkey L などが著した Female monozygotic twins with selective mutism--a case report. で、やはり場面緘黙症に強い遺伝の関与があることを示唆する内容になっています。
5件のうち2件は、カリフォルニア州立大学の Segal N という方の研究です。この方は、場面緘黙症の専門家ではなく、双子の研究でアメリカで知られています。著書に、Indivisible by Two などがあります。
双子を専門に研究する人がいるのか!世の中広いな!と私などは考えてしまいますが、International Society for Twin Studies(国際双生児研究学会)があったり、双子研究専門の学術誌が毎月発行されたりと、双子の研究は活発に行われているようです。場面緘黙症の研究よりも盛んそう?双子の研究を通じて、遺伝の問題が明らかになるようです。
こうした研究は、日本でもないわけではないようで、国立情報学研究所が提供する学術文献データベース CiNii で「緘黙 双生児」と検索すると、2件ヒットしました(「緘黙 双子」だと0件)です。
双子の研究は日本でも行われています。わりと有名なのが東京大学です。東大附属中学校の募集要項によると、同校は双生児を一般児とは別枠で募集していて、定員120名のうち40名以内が双生児枠として割り当てられています。また、International Society for Twin Studies(国際双生児研究学会)と呼応してか、Japan Society for Twin Studies(日本双生児研究学会)も日本にあります。
10/23/2006公開、12/06/2006編集