全緘黙症
概説
全緘黙。場面緘黙症は特定場面で話ができない状態を指しますが、 全緘黙症はあらゆる場面で話ができない状態を指します。 米国精神医学会による DSM-5 や 世界保健機関による ICD-10 といった正式な疾患分類にはない用語で、英語圏ではあまり使われない用語です。 全緘黙症の出現率は、場面緘黙症のそれに比べると稀と見られています。
コメント
全緘黙症の情報は極めて少ないです。日本の論文情報を検索してみても、次の通り、ほとんどヒットしません。
◇ CiNii で「全緘黙」と検索 (新しいウィンドウで開く)
CiNii は、国立情報学研究所が行なっているサービスです。
◇ J-GLOBAL で「全緘黙」と検索 (新しいウィンドウで開く)
なお、上の検索結果だけを見ると、全緘黙症が学術文献で扱われたのは1990年代以降のように思われますが、 私が確認したところ、1960年代には日本児童精神医学会で全緘黙症が話題になり、その抄録が専門雑誌に掲載されています。
↓ 私が確認した最も古い全緘黙症に関する文献です。
※ 伊藤克彦、石井高明、伊藤忍(1965)「全緘黙症(totaler Mutismus)の一例」『児童精神医学とその近接領域』6(1)、26-27。
その後も、例えば荒木冨士夫(1979)が緘黙症を分類するために全緘黙症に注目したり、 山本実(1988)による緘黙を主題とした著書の中で言及されたりと、90年代以前にも取り上げられることはありました。
それにしても、全緘黙症の場合、スモールステップの取り組みはどうするのでしょうか。 場面緘黙症だと、安心できる場面から少しずつ行なうのですが、 全緘黙症だと、安心できる場面がそもそもなく、スモールステップの組みようがないのではないでしょうか。 素朴な疑問です。
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