緘黙は発達障害者支援法の対象。根拠は?

場面緘黙症は発達障害者支援法の対象と言われています。ですが、その根拠は何なのでしょうか。

発達障害者支援法の条文では

発達障害者支援法の条文では、「発達障害」はこう定義されています。

第二条  この法律において「発達障害」とは、 自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

政令で定めるとあります。そこで、政令を見てみましょう。

発達障害者支援施行令の条文では

発達障害者支援法施行令の条文では、 発達障害は次のように定義されています。

第一条  発達障害者支援法 (以下「法」という。)第二条第一項 の政令で定める障害は、 脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、 言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする。

厚生労働省令で詳しく定められるようです。では、その厚生労働省令を見てみましょう。

発達障害者支援法施行規則の条文では

発達障害者支援法施行規則では 次のように定められています。

発達障害者支援法施行令第一条 の厚生労働省令で定める障害は、 心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害 (自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。) とする。

厚生労働省通知

そして、これらを受けて厚生労働省から通知が出ていて、このように書かれています(厚生労働省、2005)。

 これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、 脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、 ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び 「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。
 なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。(法第2条関係)

それでは、ICD-10 を見てみましょう。

F80  会話及び言語の特異的発達障害

 F80.0  特異的会話構音障害
 F80.1  表出性言語障害
 F80.2  受容性言語障害
 F80.3  てんかんを伴う後天性失語(症)[ランドウ・クレフナー<Landau‐Kleffner> 症候群]
 F80.8  その他の会話及び言語の発達障害
 F80.9  会話及び言語の発達障害,詳細不明

F81  学習能力の特異的発達障害

 F81.0  特異的読字障害
 F81.1  特異的書字障害
 F81.2  算数能力の特異的障害
 F81.3  学習能力の混合性障害
 F81.8  その他の学習能力発達障害
 F81.9  学習能力発達障害,詳細不明

F82  運動機能の特異的発達障害

F83  混合性特異的発達障害

F84  広汎性発達障害

 F84.0  自閉症
 F84.1  非定型自閉症
 F84.2  レット<Rett>症候群
 F84.3  その他の小児<児童>期崩壊性障害
 F84.4  知的障害<精神遅滞〉と常同運動に関連した過動性障害
 F84.5  アスペルガー<Asperger>症候群
 F84.8  その他の広汎性発達障害
 F84.9  広汎性発達障害,詳細不明

F88  その他の心理的発達障害

F89  詳細不明の心理的発達障害

小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)

F90  多動性障害

 F90.0  活動性及び注意の障害
 F90.1  多動性行為障害
 F90.8  その他の多動性障害
 F90.9  多動性障害,詳細不明

F91  行為障害

 F91.0  家庭限局性行為障害
 F91.1  非社会化型>グループ化されない>行為障害
 F91.2  社会化型>グループ化された>行為障害
 F91.3  反抗挑戦性障害
 F91.8  その他の行為障害
 F91.9  行為障害,詳細不明

F92  行為及び情緒の混合性障害

 F92.0  抑うつ性行為障害
 F92.8  その他の行為及び情緒の混合性障害
 F92.9  行為及び情緒の混合性障害,詳細不明

F93  小児<児童>期に特異的に発症する情緒障害

 F93.0  小児<児童>期の分離不安障害
 F93.1  小児<児童>期の恐怖症性不安障害
 F93.2  小児<児童>期の社交不安障害
 F93.3  同胞抗争障害
 F93.8  その他の小児<児童>期の情緒障害
 F93.9  小児<児童>期の情緒障害,詳細不明

F94  小児<児童>期及び青年期に特異的に発症する社会的機能の障害

 F94.0  選択(性)かん<縅>黙
 F94.1  小児<児童>期の反応性愛着障害
 F94.2  小児<児童>期の脱抑制性愛着障害
 F94.8  その他の小児<児童>期の社会的機能の障害
 F94.9  小児<児童>期の社会的機能の障害,詳細不明

F95  チック障害

 F95.0  一過性チック障害
 F95.1  慢性運動性又は音声性チック障害
 F95.2  音声性及び多発運動性の両者を含むチック障害[ドゥ ラ トゥーレット<de la Tourette>症候群]
 F95.8  その他のチック障害
 F95.9  チック障害,詳細不明

F98  小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の行動及び情緒の障害

 F98.0  非器質性遺尿(症)
 F98.1  非器質性遺糞(症)
 F98.2  乳幼児期及び小児<児童>期の哺育障害
 F98.3  乳幼児期及び小児<児童>期の異食(症)
 F98.4  常同性運動障害
 F98.5  吃音症
 F98.6  早口<乱雑>言語症
 F98.8  小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の明示された行動及び情緒の障害
 F98.9  小児<児童>期及び青年期に通常発症する詳細不明の行動及び情緒の障害

F94.0が、選択性緘黙(場面緘黙症)です。 このように、回りくどくて分かりにくいのですが、緘黙は理論上、発達障害者支援法の対象です。

それにしても、この法律が定義する「発達障害」は意味が広いです。 緘黙のように、医学的に発達障害とされない障害が、発達障害に含まれています。