※量が膨大なため、漏れや間違いがある恐れもあるので注意。実際、読むのだけで大変で・・・
◇ アスペルガーなくなる ~神経発達障害~ ◇
いわゆる「発達障害」と言われてきたものは、緘黙児への影響も大きいので注目点の一つです。
この分野の改訂は、長期的にみると医療現場にいろいろと影響を及ぼしそうです。
● 神経? ●
これまで、発達障害は、
「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害(Disorders Usually First Diagnosed in Infancy, Childhood, or Adolescence) 」
というチャプターの中にありました。選択性緘黙も今まではこの中にありました。
DSM-5においてーー
まず、発達障害は
(1)神経発達障害〔Neurodevelopmental Disorders〕
(2)破壊的、衝動制御及び行為障害〔Disruptive, Impulse-Control, and Conduct Disorders〕(訳自信なし(-_-;))
ーーの2つに分割し、それぞれ新しく移動したようです。
この「神経発達障害[NDD?]」に
(旧)広汎性発達障害、チック障害、学習障害、ADHD、知的障害・・・などがひっくるめておかれるようになったようです。
(図で表した方が分かりやすそうですね)
「神経発達障害」と明記することで、「親のせいではない」「(広汎性)発達障害は脳機能障害とされている」
ということが説明しやすくなったこと自体はいいことなのかなという気がしますが、皆さんどう思っていらっしゃるのでしょう?
※ただし、自閉症などの正確な原因は今のところは「不明」ということになっているようです。
● 自閉症スペクトラム[ASD] ●
~おおざっぱになる?~
これまで自閉症スペクトラムなどは「広汎性発達障害[PDD]」に属していました。
● 自閉症スペクトラム障害の変更点についてビデオでご覧になれます(英語) ●
DSM-5 Video Series: Changes to Autism Spectrum Disorder
ここにもあるように、DSM-5では
自閉性障害、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害[PDD-NOS]は
すべて
「自閉症スペクトラム障害」に統一され、かわりに
「広汎性発達障害」という名称そのものがなくなったようです。
※ただし、ICD-10は従来通りです。
(個人的には、ある意味シンプルでわかりやすいけれど、「自閉」というネガティブな印象の用語が誇張されてしまったような気もして
ちょっとさびしいです・・・。それと、定型発達後に退行が起きる「崩壊性障害」と、
初めから発達に遅れがみられる「自閉症」とを一緒くたにしていいのかという疑問も・・・
それから、英語表記の時はASDsと複数形にすることもあったけれど、今後はどうなるのでしょう?)
なお、これまで広汎性発達障害にカテゴライズされていた「レット障害」は神経疾患という扱いになり、DSMそのものから除外されたようです。
遺伝子レベルで違うので、ダウン症みたいな扱いなのでしょうか?(レットは基本女児;男子の場合はクラインフェルター症候群(女性化してしまう疾患)を合併する
らしいことからも自閉症スペクトラムとは明らかに違うとは感じますが)
● ASDの診断基準 ●
これまでは、「社会性の障害」「常同性」のうちのどちらかひとつだけ満たしていればよかったものが、
DSM-5ではそのどちらも満たす必要があると変えられたようで、 診断基準が厳しくなったみたいです。
それから、「感覚過敏」が診断基準に加わったとのこと。
(本当はもっと重要なポイントが多々あるのですが、
出典情報の整理などが膨大で大変なのでとりあえず今回はすべて書ききらないことにします。機会があれば知りたいです。)
● 「社会コミュニケーション障害」新設 ●
また、新たに
「社会コミュニケーション障害(Social (Pragmatic) Communication Disorder[SCD])」という診断名が用意されたとのこと。
http://www.psychiatry.org/File%20Librar ... -Sheet.pdf
これまで自閉的傾向の人や、特定不能の広汎性発達障害に属していたような人は、こちら(SCD)に流れやすくなるのでしょうか?
日本ではアスぺの診断に傾きやすいとちらほら耳にするのですが、実際の運用や利害関係にどのような影響があるのか気になります。
DSMにおける(旧)広汎性発達障害の診断状況は各国でバラつきがあるので、DSM-5は各国ごとに異なる影響を及ぼすことになるかも・・・
この件に関しては、自閉性障害、PDD-NOS、アスぺなどの比率の統計をいくつか見かけたのですが、
いまいちバラバラではっきりとしたデータが分かりません。正確な統計情報があれば知りたいです。
● 客観的、科学的な診断とはなんなのだろう ●
診断のスピードや支援の拡大が大事なのもわかるけれども、
「自閉症スペクトラム」というのは、緘黙などとは違い、基本的に「一生背負うもの=脳神経の障害」であって、
それを曖昧な情報から安易につけられてしまうことの怖さも感じてしまうのは自分だけなのでしょうか。
(もちろんいろいろ慎重にテストはしますけれども)
もし、徹底的に「機械」や「器具」をつかって、生物学的かつ客観的な診断をすることのできる技術が開発されたなら、そちらのほうがいいとさえ思ってしまいます。
(もちろん実際の福祉や、支援のうけやすさの問題も絡むので何とも言えないところではありますが・・・)
個人的には、「自分たちは、なんとも『曖昧な概念』に一生を振り回されているんだなあ」と感じてしまいます。
それでいて「アスぺ、アスぺ」と世の中の人からバカにされる理不尽さがなんとも・・・
個人的には、臨床現場や製薬企業の利害的な影響を受けやすいAPAだけでなく、
基礎研究重視のNIMH(米国国立精神保健研究所)さんの進める研究のほうにも期待しています。
NIMHは生物学的な障害としての分類法「RDoC」 の研究を進めていこうとしているらしいです。
でも、実用的なレベルになり、診断基準にも応用してみようという話がおこるレベルになるにはあと何十年かかることやら・・・
現状では、臨床現場はAPAに頼るしかなさそうです。
http://www.nimh.nih.gov/about/director/ ... osis.shtml
ただ、NIMHの所長が「DSM-5に基づいた研究には予算を出さない」旨の発言をしているらしいのが気になります・・・
今以上にAPAとNIMHの足並みがそろわなくなり、NIMHが独自研究にエネルギーを注ぎ込むようになると、
緘黙みたいな影の薄い疾患の研究はどうなるのだろうと思ってしまったり・・・まあ、異国の話ですが。
http://www.psychologytoday.com/blog/sid ... port-dsm-5
両者について、アラン・フランシス氏は
「NIMH vs DSM-5: No One Wins, Patients Lose 」という記事を書かれているようです。
● 緘黙児への影響は? ●
ところで、場面緘黙症状を持つ人の中には「広汎性発達障害」の診断を持つ人もいますが、おそらくこのタイプの人たちは
「常同性」はみられないような気がするのですが、その場合、どういう扱いを受けることになるのか気になりました。
● 多軸評定について ●
DSM-5では「多軸評定」が廃止されたようですが、このあたりまだ詳しいことは調査不足なので、
教えていただけると嬉しいです。知的障害の扱いなどはまだ勉強不足です・・・
● ADHD(注意欠陥多動性障害) ●
http://www.psychiatry.org/File%20Librar ... -Sheet.pdf
ADHDは「(旧)注意欠陥障害 [ADD] 及び破壊的行動障害」から「神経発達障害」に移動。
「自閉症スペクトラム」や「学習障害(LD)」と同じカテゴリですね。
また、自閉症スペクトラムがあっても除外診断せず、2つ合わせて診断していいようになったらしい。
なお、「行為障害」は「ADHD」から切り離され、「破壊的、衝動制御及び行為障害」に移動したみたいです。
この「破壊的、衝動制御及び行為障害」には、「反抗挑戦性障害」「放火癖」「盗癖」「反社会性パーソナリティ障害」などがカテゴライズされているようです。
ずいぶんとハードな所に行ったんですね(冷汗)。
因みに、以前、「SMは反抗挑戦性障害の一種だ!」と言っているアメリカ人のおじさんを見かけたことがありましたが、たまったものではありません!
今回不安障害に明確に位置付けられてよかったです。これで「APAでは不安障害と定義しているようです」とはっきり主張できます。
※行為障害の話題はSMG~CANでも見かけたことがあります。その子は強迫性障害の疑いもありました。
Ask the Doc:Should we talk with our son about his severe SM, or not make an issue of it?
学習障害(LD)などに関しては勉強不足で今回は書きません。(それに、DSMが変わったからといって支援内容が今すぐに変わるわけでもないし)
発達障害に関してはまだまだ見るべきポイントが山ほどありそうです。が・・・あまりにも膨大で書ききれません。
ただ、全体としてDSM-5は簡略化に向かっている印象をうけました。
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《参考》
・「アスペルガー」カテゴリー削除と診断範囲の現象の関係
http://bylines.news.yahoo.co.jp/idesohe ... -00024646/
・菊池哲平 (2010) 「自閉症とソーシャルブレイン障害」
http://hdl.handle.net/2298/17696
・DSM-5 での注意欠如多動性障害(ADHD)の取り扱い
http://www.afcp.jp/entry/2013/05/26/222033
・自閉症、アスペルガー・・・「ASD」に統合 米精神医学会、基準を改訂
http://qq.kumanichi.com/medical/2012/06/post-1971.php
(いずれも2013年6月5日 最終アクセス)
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