緘黙症って何?


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緘黙症って何?

緘黙症(mutism)とは、発声器官に器質的障害がなく、言語の習得にも問題がないにもかかわらず、特定の場面で継続的に発語ができない状態のことを言います。 読み方は「かんもくしょう」です。 家では話ができるにもかかわらず、学校に行くと一日中全くあるいはほとんど話ができず、 しかもそうした状態が何ヶ月や何年といった長期間続くといった例が典型です。

症状が重篤化すると、話すことができないだけでなく、思うように動くこともできなくなります。 学校でトイレに行けない場合や、給食を食べられない場合もあります。

緘黙症は主に幼稚園児や小学校低学年の児童が発症しますが、 近年、緘黙症状を成人期に持ち越す「大人の緘黙症」も注目を集めています。 統合失調症やヒステリー失声とは異なります。また、発達障害とも通常分けて考えます。

不安障害との見方が欧米を中心に広まっています。日本では、教育行政の立場から情緒障害として扱われることも多いです。

米国精神医学会の診断・統計マニュアル DSM-5 や、世界保健機関の ICD-10(国際疾病分類第10版)にも「選択性緘黙」として記載されています。

緘黙症の分類

緘黙症は、話すことができない場面をもとに、場面緘黙症(selective mutism)と全緘黙症(total mutism)に分類することができます。

◇ 場面緘黙症

学校など、特定の場面で話すことができません。しかし、家では何の問題もなく話すことができます。特に、幼稚園や小学校への入学をきっかけに問題化します。緘黙症の多くが、この症状だと言われています。

このサイトでは、この場面緘黙症をメインに扱います。なお、「選択性緘黙」「選択的緘黙」「選択緘黙」とも呼ばれています。

◇ 全緘黙症

重度の緘黙症で、あらゆる場面で話すことができません。非常に稀なケースです。

合併する問題

場面緘黙症は、単に話すことができないだけにとどまりません。他の問題を合併していることも多いです。

代表的なのは、分離不安障害などの何らかの不安障害です。特に社会不安障害や回避性障害は、ほとんどの緘黙症児は合併しているという報告もあります(Dummit et al., 1997; Black and Uhde, 1995)。

また、場面緘黙症の定義を広く取る論者からは、 発達障害や発達の遅れの問題(コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、軽度精神発達遅滞、アスペルガー障害)を抱えた緘黙症児が、一般の子どもに比べて多いという指摘もあります(Kristensen, 2000)。

その他、夜尿症(Kristensen, 2000)、聴覚の問題(Bar-Haim, et al., 2004)、 などを合併している場合が、場面緘黙症でない子どもに比べて多いという報告もあります。

早期介入の必要性

話ができないと、学業に支障が出たり、社会性の発達が阻害されたりといった問題が起こります。また、何らかの二次障害にかかる場合もあります。

「そのうち、自然に話せるようになる」として放置される場合もありますが、症状が固定化する恐れもあり、早期発見・早期介入が必要です。 ですが、発話を強要するとかえって不安が高まり、話せなくなってしまいます。むしろ不安をやわらげることが必要です。

よくある誤解

◇ 場面緘黙症児は、自らの意思で話さないのではありません。話さないのではなく、話せないと表現した方が適切です。

◇ 場面緘黙症児は、ただの大人しい子や内弁慶の子ではありません。もっと極端です。

◇ 場面緘黙症の概念は自閉症より古く、「最近できた新しい病気」ではありません。 また、近年活発な啓発運動は経験者や保護者らが中心のものであり、医療関係者による陰謀でもありません。

(12/09/2013)


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