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題名: 高校での配慮をお願いする
投稿日時: 2007-06-17 16:45:32
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◆ 4月3日(火)

《作戦会議》

この日、事情を知っている5人の先生(男性3人、女性2人)と息子のことについて話し合いました。メンバーは新旧の教頭先生と担任の先生、保健室の先生、保健部長の先生です。最初に相談に乗ってくださった前の教頭先生の判断で、このメンバーでの話し合いになりました。皆さん、発達障害に関しても場面緘黙症に関してもご存知ではありませんでした。

特に、新しい教頭先生にはKnet資料No.1とNo.3を前もってお渡ししておきました。私の書いた記録だけいきなり読んで 「よくもまあ・・・」 という感想を持っていた教頭先生も、資料と私の説明とほかの先生たちの話などから大体のことを理解してくださったようでした。

息子の場合、適応状態がよければ 「障害」 と言わなくてもいい程度のグレーゾーンにいるということもあり、もし学校環境が本人にあっていれば何事もなかったかのようにやっていける可能性もありました。以前、専門医から 「レッテルをはるようなことはよくない。ダメージが大きいことが予想されるので、障害名が決して本人の耳に入ることのないように」 と指導があったことを伝えると、各教科担任の先生方には、最初の段階では 「場面緘黙」 という言葉も 「発達障害」 という言葉も使わずに、お願いしたいことだけにしぼって伝えたほうがいいという話になりました。いろいろな先生がいらっしゃるので、慎重に進めたほうがいいという理由からです。検査結果やこれまでの経過を細かく書いた資料を、5人の先生方だけにはすでに読んでいただいていましたが、その他の先生方にはよけいな情報は流さないという方針です。息子の適応状態が悪ければもっと詳しい説明も必要になるかもしれませんが、あとは必要になった時に個別にお願いしていくことになりました。

教科担任の先生方には、全体の会議の中で次のような形でお願いをすることになりました。
「声が出にくいなど気になることがあっても、『話さない』 のではなくて極度の緊張状態から 『話せない』 のであるから、決してそのことを指摘するようなことをせず、いいところをみつけプラスの言葉がけをしていただけるよう配慮をお願いしたい。」
また、苦手な体育、家庭科など実技科目の先生には、配慮の必要な活動に関して担任の先生が直接お願いをしてくださることになりました。

行事関係では、入学式の返事は聞こえなくても注意されないから問題ないとして、まず問題になるのはクラスでの自己紹介。そこで声が出ないと、クラスメートから 「話せない子」 と見られることになります。高校生活の最初からつまずいてしまうことになると、その先が苦しくなるということで、もう少し時間が経って学校生活に慣れたころにやったほうがいいのではないかという案が出ました。また、教室で担任の先生と自己紹介の予行演習をして、たくさんほめて自信をつけさせたらどうかとも言っていただけました。

また入学式の2日後の発育測定では、自主的に校内をあちこち移動して、体重・身長・視力など各検査室を回らなければならないということで、いっしょに動いてくれる生徒がいないとどうしていいか分からなくなるのでは・・・?という話になりました。それで、中学のクラスメートだった普通科のT君に、いっしょに行動してくれるように頼むことになりました。

4月中旬に予定されている特進科の2泊3日の宿泊研修では、各クラスで 「自分史」 についての発表、1年生から3年生までの異学年交流会で 「なぜ働くのか」 についての意見発表があるということでした。今までは、原則、全員発表の形をとってきたということでした。クラスに全く馴染んでいないこの時期の泊まりの行事というだけでも負担なのに、いきなり大勢の前での意見発表ではハードルが高すぎると感じました。例年、泊まらずに通いで参加する生徒や、参加しても精神的なことが原因で体調不良になり途中で帰る生徒もいるということで、「無理させることはないですよ。」 と言っていただけました。ただ、最初のクラス行事でもあるので、最初から最後まで不参加ということになると 「あいつはいなかった」 と周りに見られることになるので、「どんな形でもいいから参加したほうがいい。参加できただけで自信につながるはず。」 との話でした。意見発表に関しては班代表の形にするなどいくらでもごまかしはきくということで、異学年交流会で各グループに分かれるときには必ず担任の先生が息子の班についてくださることになりました。

「息子も成長したので、中学校入学のときと同じような事態にはならないと思う。本人が、『高校で変わりたい、僕は普通の人になるんだ』 と張り切っているので、とにかく滑り出しさえうまくいけばなんとかなるのではないかと期待している」 ということも伝えました。「高校生活のスタートを成功させるため、緊張がほぐれてくるまでは無理させない。」 ということになりました。

《新しい教頭先生と面談》

新しい教頭先生が、息子と1度も会っていないからよくわからないとおっしゃっていたので、話し合いが終わってから息子を連れていって個室で会っていただきました。先生が 「こんにちは」 と声をかけると自然に 「こんにちは」 と返していたし、「よろしくお願いします」 にも 「よろしくお願いします」 とぺコンと頭を下げていたので、「大丈夫だな・・・」 と思って私は席をはずしました。

先生は冗談を交えながら 「私は君の味方だから・・・」 とか 「困ったことがあったらいつでも相談に乗るよ」 など、息子にとってわかりやすい、ストレートな話をしてくださったようです。なんと息子は、高校でこれまで会話をした5人の先生のうちで、その教頭先生が1番のお気に入りだそうです。「お母さん、新しい教頭先生いい人じゃん!」 ととても喜んでいました。

「教頭先生がね、緊張しても死ぬことはないって言ってたよ。先生も緊張することがよくあるけど、そのうちに時間が過ぎて行って、『あ、もう終わった・・・』 ってなるんだって。体の調子が悪い時には仕方がないけど、緊張してもいいからいろんなこと頑張らなきゃダメだって言ってたよ。それから 『苦手だからやらない』 っていうのはだめだって。苦手なこともやってみれば得意になることもあるんだって。だから、数学も頑張るよ。ぼく、高校で絶対頑張るからね!!」 と、えらく張り切っていました。


題名: 配慮を拒否
投稿日時: 2007-06-19 10:53:05
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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◆4月4日(水)

《息子の意思を確認する》

先生たちとすでに細かいところまで打ち合わせをしたということは言わずに、これからのことを少しずつ息子に打診してみました。すると息子は 「僕は高校ではみんなと同じようにやりたいんだよ。先生には何も頼まないで!」 と言うのです。「自己紹介も宿泊研修での発表も普通にできるよ。だって教頭先生が頑張らなきゃだめって言ってたよ。」 と言います。

「中学校であれだけ練習してもみんなに聞こえる声が出せなかったんだし、クラスで話すことはもう少し学校生活に慣れてからにしてもらえるように頼んだほうがいいんじゃない?最初に失敗してしまうと、そのあとが大変だよ。」 と私が言っても、
「高校ではできる。なんの配慮もお願いしてほしくない。」 と言ってききません。
「自己紹介の予行演習をいっしょにやろうか?」 と担任の先生が言ってくれたことを伝えると、「それも必要ない。お母さんはできないと思っているかもしれないけど、高校ではぼくはできるんだよ。」 と言い張ります。

私:「知ってる人が誰もいないわけじゃないんだよ。Hさん(中学校からのクラスメートの女の子)も同じクラスだよ。小学校のとき一緒だったR君もいるし…。今まで知ってる人がいるところでは聞こえる声が出せなかったでしょ?」
息子: 「Hだってみんなの前で話すの苦手だよ。友達とおしゃべりしてる時は元気なのに、教室で発表するときはすごく小さい声になるんだよ。ぼくだけじゃない。他にも話すの苦手な子がいっぱいいるから、平気だよ。」
私 :「そっか、じゃ、まずは最初が肝心。入学式の返事をばっちり決めようね。」
息子: 「そんなの簡単だよ。ただ、ハイって言えばいいだけでしょ。」
私 :「1日登校の時も、○は返事したって言ってたけど、お母さんには声が全然聞こえなかったよ。」
息子: 「ぼく、ちゃんと返事したよ。」
私: 「自分の声は自分に1番大きく聞こえるけど、○が思ってるほどは周りには聞こえてないよ。何年間も教室で聞こえる声を出していないから、どの程度の声を出せばいいのかわからなくなってるんじゃない?」

その後、入学式を想定して少し返事の練習をしてみました。
「○○君!」 「ハイ!」
何回かやったあと、「自分で、これくらいかな?と思う声よりこころもち大きい声で返事してごらん。そうしたらきっとみんなにも聞こえるよ。」と話すと息子は納得したようでした。

教頭先生がいったいどんな話をしてくれたのか・・・、息子が妙に自信満々で、(これまでは根拠のない自信だったことが多かったので・・・) 親としてはとっても心配でしたが、「本人がやると言うのだから失敗してもいいからやらせてみるしかないかな・・・」 と覚悟を決めました。


◆ 4月5日(木)

《担任の先生に連絡》

担任の先生には 「自己紹介も発育測定も宿泊研修もみんなと同じようにやりたい。何も配慮してほしくない。」 と息子が言っていることを伝えました。「うまくいくかわからないですが、本人がやりたいと言ってますので、例年通りのやり方でお願いします。ただ自己紹介に関しては 『なんでもいいです』 という形だと何を言えばいいか迷うと思うので、『これとこれを言ってください。』 と具体的指示を出していただけるとありがたいです。」 とお願いしました。


題名: 快調な滑り出し ―入学式―
投稿日時: 2007-06-23 21:18:18
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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◆ 高校1年 4月8日(日)

《入学式の返事》

高校の入学式ってなんだか元気がない・・・うちの息子の高校はとくに、公立入試を失敗して行く子も多いせいか、しょんぼりしている子もいるようで、3分の1くらいの生徒の返事が全く聞こえませんでした。「これじゃあ、返事が聞こえるかどうかなんてことはたいした問題じゃないな・・・」 と思いました。

でも、そんな中、息子の返事は聞こえました。低くこもった声ではありましたが、後ろにすわっている保護者のほうにもなんとか聞こえました。「よし!」 と心の中でガッツポーズ。中学ではできなかったことを、息子は見事にやってのけました。息子の場合、知らない生徒ばかりの高校を選んだわけではありませんから、かなり勇気のいることだったと思います。「返事が聞こえた」 というだけのことでしたが、とても幸せな気分になれました。

《先生がクラス全員に翌日の自己紹介について説明》

式終了後、保護者も教室に入って担任の先生のお話がありました。中学校ならここで保護者を前に、生徒が一人ずつ「中学校生活の抱負」など、自己紹介をさせられるところですが、様々なプリント類の配布、事務手続きの説明などたくさんあって、そんな時間はなさそうでした。

最後のほうで、明日の予定を先生が説明しました。「明日、みんなに自己紹介をしてもらいます。時間をたっぷりとれるといいんですが、残念ながら他にやらなければならないことがたくさんあって、時間がありません。これから追々お互いのことがわかってくるでしょうから、明日の自己紹介では出身中学校名と名前だけ言ってくれればいいです。ただし、どうしても自分をアピールしたい人は自由に話してくれてもかまいません。でも、ホントに忙しいから、できるだけ出身中学校名と名前だけにしてください。」

通常なら、わざわざ前日から自己紹介の説明などしないのでしょうが、息子が心の準備をしやすいように、クラス全員に 「簡単な自己紹介でいい」 ということを強調してくださったようです。

帰りがけ、前の教頭先生が息子を見かけて 「入学式の返事、しっかり聞こえたぞ~!」 と声をかけてくださって、息子はにこにこうれしそうにしていました。


題名: 自己紹介の日
投稿日時: 2007-07-04 23:55:02
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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◆ 4月9日(月) 

《自己紹介》

朝、学校に向かうとき、緊張がピークに達していたようでした。息子は花粉症なので、車で送っていくのですが、学校に向かう車の中でぶるぶる震えながら 「緊張する~」 と何度も言っていました。「でも、ぼく頑張るよ!」 とも言っていました。

息子が元気に帰宅しました。教室での自己紹介、無事クリアしたそうです。
1日の生活を無難に終えて、息子は 「今日も頑張ったよ!」 と大満足の様子でした。担任の先生に後で聞いたのですが 「何の違和感もなく、間があくこともなく、普通にできました。声が聞こえないような子も他にいましたが、むしろ声が大きいくらいで・・・」 とのことでした。

同じ中学出身で、小学4~6年のとき同じクラスだったR君が、息子を頼りにしているらしく、そのことも自信につながっているようです。

R君は息子が答えることを期待せず、一方的に息子に話しかけているようでした。R君は息子と違い、学校でしゃべりすぎる傾向があって、小学校、中学校で、誰にも相手にされない傾向がありました。うちの子は家でしゃべりすぎる傾向があって、表れ方は逆ですが、人の気持ちや場の雰囲気を理解するのが苦手な点で、たぶん根っこは同じでないかと以前から感じていました。「その子となら気が合うかもよ。」 と以前にも息子に言ったことがありましたが、息子は 「仲間だと思われたくない」 と言って敬遠していました。高校でまた同じクラスになり、同じ中学出身者同士、お互いに頼りにし合っていい関係が築けるかも・・・と思いました。

《教頭先生が息子に話してくださったこと》

息子は、発育測定に関しても、「一人でも大丈夫だよ。誰にも何も頼まなくていい。」 と言っていました。

つい数か月前まで、ちょっとしたことで不安を訴えるので、中学校の担任の先生にお願いごとばかりしていました。どこかに移動しなければならないときには、一緒に行動してくれる生徒をつけてもらったり、「給食当番のときの台ふきの仕方がわからない」 と言うので、どういう段取りでバケツに水を汲み布巾をしぼって台を拭くかなど、事細かにマニュアルを書いていただいたりしていました。他の子がやっているのを見て 「だいたいこんな感じかな?」と見当をつけて適当にやるのが普通で、実際やってみればそれほど難しくはないのですが、「あたりまえのことを自分の判断でやる」 ということができない子でした。

「中学校であんなに大変だったのに、この強気はいったいなんなの?」 と思い、教頭先生に 「息子と会ってくださった日、いったいどんな魔法をかけてくださったんですか?」 と聞いてみました。すると、教頭先生は 「ちょっときつい話をしたかもしれない・・・」 と言って思い出せる範囲で教えてくださいました。

・人はいつか必ず死ぬ。普通の順番から言うと、教頭先生が先で、そして○君のお父さん、お母さんも○君より先に死んでしまう。
・今はお父さんやお母さんが働いてくれるから生活できるが、いつかは、お父さんお母さんがいなくても一人で生きていけるようにしなければならない。
・この先、高校卒業後にどうするのかといったことも考えていかなければならない。
・高校で自分の適性を見つけられるよういろいろなことを頑張っていこう。
・みんな苦手なことを持っている。体の調子が悪い時は仕方がないが、緊張してもやるべきことはやらなければならないし、苦手なことにも取り組んでいかなくてはならない。

息子にたった1回会っただけで心に響く指導ができてしまう教頭先生、「すごい!」 と思ってしまいました。同じことを伝えるのでも状況や言い方次第ではマイナスのメッセージになってしまいます。教頭先生は長年、進路指導をやってきた先生ですが、その辺のところも踏まえた上で、息子に上手に話してくださったのでしょう。

入試の日、面接官から 「頑張らなきゃダメ。」 というようなことを言われたときに、息子は 「いやなことばかり言われた。」 という受け止め方をし、「こんな高校行かないからね。」 と怒っていました。しかし、今回はあのときとは違って、厳しい話を前向きに受け止めるだけの気持ちの余裕があったのでしょう。入試の日からさらにいろいろ取り組んできて、短期間に自信を積み上げてきたこともあったと思いますし、新しい生活に向けて張り切っている時だったからよかったのかもしれません。

また、母親や身近な人からの話だったら逆に反発も感じたかもしれませんが、初めて会った教頭先生の話はとても新鮮だったようです。ちょっと厳しいけれど、自分のことを真剣に考えてくれているのが息子にも理解できたのでしょう。「私は君の味方だから・・・力になるから・・・」 という言葉が特にうれしかったらしく、教頭先生のお話を、息子はとても素直に受け止め、プラスのエネルギーに変えることができたようです。


題名: 予想以上に順調に・・・
投稿日時: 2007-07-07 23:01:26
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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◆ 4月10日(火)

《人の視線が気になる》

毎朝、車で学校に送って行く時、体を震わせながら 「緊張する~」 と何度も言います。

息子:「教室に入った時、みんなが僕のこと見ているような気がするんだよ。」
私:「だれかが教室に入ってきたとき、○はいちいちその子のことをじろじろ見るの?」
息子:「ううん・・・そんなことしないけど・・・」
私:「みんな自分のことで精いっぱいで、○が思うほど、みんな人のことなんか注目してないから心配ないよ。気にしすぎ!」
息子:「そうかな~・・・そうかもしれないけど、気になるんだよ。」
私:「大丈夫。だんだん慣れて気にならなくなるから。」

《発育測定》

一人で動けるのか心配していたのですが、同じ中学出身のR君が、「いっしょに行こう」 と誘ってくれたということで、全く困らなかったようです。R君は相変わらず一方的に息子に話しかけ、一人で笑ったりにぎやかにしているとのことでした。彼がいてくれてよかったなあ・・・と思いました。


◆ 4月13日(金)

《クラスメートとの初会話》

教室で息子の隣の席は、他の中学校出身のG君という活発な子で、息子によく話しかけてくるとのことでした。息子にとっては苦手なタイプですが、その子は息子のことを 「できるやつ」 と勝手に思い込んでいるそうです。

G君:「なんかメモ用紙持ってない?」――― 息子:「ない」
G君:「ノートの半分あけて書いたほうがいいの?」――― 息子:「さあ・・・」
G君:「どっちがいいのか聞いてんだよ!」――― 息子:「適当でいいんじゃない?」

という会話をしたそうです。G君の遠慮のない強引な態度が、息子が口を開くきっかけを作ってくれました。記念すべき、高校のクラスメートとの初めての会話です。「ぼく、Gに慣れたよ!」 と自慢していました。「変わりたい!」 という気持ちが盛り上がっているときに、今までの自分を知らない子が、何の意識をすることもなく普通に話しかけてくる状況というのは、緘黙克服の絶好のチャンスだと思いました。

《順調にステップアップ》

R君が 「一人じゃ心細いから、いっしょに行こう!」 と誘ってくれて、二人で校内をあちこち歩き回って、部活動見学をしてきたそうです。先生に話しかけられて、周囲に生徒がいたのに答えたとのことでした。

体育の時間の出席確認の際には、先生が自分の名前を読み間違えたので、「○○です」 とみんながいるところで訂正したそうです。理科の先生は、教科担任会での 「配慮が必要な生徒」 に関する話を聞き流していたようで、最初から遠慮なくばんばん指名し、息子も普通に答えたそうです。

息子は 「今日も頑張ったよ!」 と満足した様子で帰宅しました。

誰かに自分から話しかけるというのは (先生に対しても) 一度もできていませんでしたが、もしかしたらこのままうまくいくかもしれないと思いました。

特進科に同じ中学の子がいないわけではないのですが、おとなしく話すのが苦手なタイプの子や不登校気味だった子など、息子とは交流のなかった子たちだけだったので、その子たちのことは気にならないようでした。でもやはり、話さない自分を知っている普通科の子たちにたまに会うと、意識してしまい、緘黙モードにもどってしまうようでした。(教室の階が分けてあるのでめったに会わないようでしたが・・・)
息子が中学で話せなかったことをよく知っている子がクラスに数名いるような公立高校に進学していたら、息子はおそらく教室で話すことはできていなかったと思います。

高校入学前は、親しい友だちが一人も同じ高校の特進科に進学しないことを、私は心配していました。もし一人でもいれば、入学前に会話練習をさせてもらうことも可能なのに・・・と考えたりしてました。

でも、結果的に、場面緘黙状態から抜け出すためには、中学の友だちはいないほうがよかったようです。どうやら、緘黙克服のきっかけをつかむためには、自信を蓄えるだけでは十分とは言えないようです。以前、心理士さんにも言われたことですが、「話せない自分を知っている人がいない場所でやり直す」 ことも必要と言えそうです。


題名: 宿泊研修
投稿日時: 2007-07-09 22:22:24
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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◆ 4月18日(水)

《宿泊研修 1日目》

息子が、2泊3日の宿泊研修(勉強合宿)に出かけました。自宅から車で30分ほどの宿泊施設で、小学校時代から、宿泊研修、学級親子レクなどで度々使われてきた場所です。息子がその宿泊施設に泊まるのは3回目か4回目でした。小5のときに、例のいじめっ子(中1のクラスメートのA君)からおなかにパンチされたつらい思い出もあり、息子にとってはいやな場所でした。

例によって前日の夜は不機嫌になり、朝は 「気持ち悪い」 「頭が痛い」 「やっぱり無理~」 とさんざんごねました。「自分で泊まるって決めて申し込んだのだから、1日過ごしてみて、泊まるのは無理と自分で判断したら先生に言う。」 ということで納得し、出発することができました。

先生には、「泊まるか、帰るか、夕方になったら聞いてください。帰りたいというようなら迎えに行きます。」 とお願いしました。夕方になっても連絡がなかったのでなんとか踏みとどまっているのだろうと思っていたら、夜、11時過ぎ、教頭先生と担任の先生から電話が入りました。「何かありましたか?」 といきなり聞いたら笑われてしまいました。息子は自分なりのペースでなんとか過ごしているとのことでした。「泊まるかあ~?」 と聞くと、こっくりとうなずいたということでした。この合宿がいやな思い出にならなければいいなあ~と思いました。


◆ 4月19日(木)

《宿泊研修 2日目》

無事泊まれたから、うまくやっているんだろうと思って、のんびりしていたら、お昼ころ、担任の先生から電話が入りました。「 『具合が悪い』 と本人からの申し出があったので迎えに来てほしい」 ということでした。体のほうがついていかなかったのは残念でしたが、自分から先生に申し出たということだったので、「すごい!!」 と思ってしまいました。これまで、学校で自分から誰かに話しかけるということが1度もできていませんでしたから。

吐き気がして朝食も昼食も食べられないということで、昼過ぎ家に連れ帰りました。ところが、家に着いたら、「あれ?治ったみたい・・・」 とのこと。昼寝し、夕ご飯をしっかり食べることができました。宿泊研修の最終日、体調が回復したらまた参加することを先生に約束していましたから、「明日また行こうね」 と話し合いました。

夜になって、息子が宿泊研修のことをいろいろ話し出しました。
「ホントは昨日の夜も泊まらずに帰りたかった。でも、先生に聞かれた時間がすごく遅かったから、もう寝るだけだと思って泊まるって答えた。GがN君をいじめるからすごくいやだった。だから具合悪くなったんだよ。ホントはそんなに我慢できないほど具合悪かったわけでもないんだ。R君といっしょだと落ち着くけど、今回は部屋が別だった。居場所がない感じで家に帰りたかったんだよ。」

話を聞くと、例の元気なG君が、息子たちがいる部屋に乱入してきて、N君(ちょっとおとなしいタイプ)が笑うと 「笑うな。四つん這いになれ。」 と命じ、ほうきでおしりをたたくのだそうです。「N君が 『いやだ』 って言ってもGがしつこいから仕方なくやっていた。笑いながらたたかれていたけれど、いやだったと思う。部屋に入る時、Gがいないかどうかきょろきょろして、いつもおどおどしていた。先生はそのこと知らないよ。」 と息子は言っていました。
「自分がやらされたら・・・と思っていやだったの?」 と聞くと
「僕は大丈夫。しつこく言われても絶対にやらない。あまりしつこく言われたら殴りかかってやる。」 とのこと。
「いきなり殴りかかるのはやめてね。こっちが悪いことになるから。」と 言うと
「わかってるよ。」 とのこと。

やられている本人はそれほど負担に思っていない可能性もありましたが、他の子がやられているのを見て息子が具合が悪くなるというパターンは以前もありました。これは早めに先生に対処していただく必要があると思い、先生に相談してもいいか息子に確認したうえで電話しました。担任の先生はすぐにG君を呼んで指導し、G君が息子たちの部屋へ出入りすることを禁止してくださいました。


◆ 4月20日(金)

《宿泊研修 3日目》

夜、家でぐっすり眠って、朝食をしっかり食べることができたので、車で送っていきました。宿泊施設に近づくにつれ、「緊張する~」 と何度も言い、ぶるぶる震えていました。車から降りるのに少し手間取ったものの、しばらくして覚悟が決まって、息子は一人で降りて歩いていきました。

夕方、息子を迎えに行くと、宿泊研修を終えた担任の先生とばったり会いました。
「大丈夫でした!!初日は全員に発言させることを避けて、班代表が発表する形をとりましたが、今日は全員発表の形にしてみました。普通に話すことができました。Gのことも適当にあしらって無難に過ごしてました。」 と先生が嬉しそうに教えてくださいました。

息子に聞いてみると、なんと、同じ中学出身の顔なじみの先輩を含む7~8人での異学年交流会で、「なぜ働くのか」 に関して自分の意見を発表し、クラスではみんなの視線を浴びながら、「いろんな人と話とかできてよかったです。」 と3日間の感想を言ってきたそうです。
「僕、緊張したけど、がんばったんだよ!」 と息子。
「すごい!!今回の宿泊研修は大成功だったね。」 と喜び合いました。


◆ 4月21日(土)

《宿泊研修を振り返る》

一夜明けて、宿泊研修の途中で帰ってきたことを悔やみ、「ぼく、だめだったでしょ。」 と朝ちょっとだけ暴れました。でも、「具合が悪いのに無理をして、最初から最後までただ流されて過ごすことよりも、自分から行動を起こして、先生に具合が悪いと申し出ることができたことの方が、ずっと意味がある。」 と話し、特別の配慮をお願いすることもなく皆といっしょに一泊できたこと、知っている人がいるところでも皆と同じように発表ができたことなど、3日間の成果について振り返り、「最初からパーフェクトでなくていい」 という話をしているうちに落ち着きました。

中学3年の修学旅行のとき、同室の子がいるところで歯磨き入浴をすることに抵抗があり、また、クラス行事の宿泊研修でも皆といっしょに歯磨きしたり、大人数で寝ることがいやで途中から別行動になったりしていました。「あのときできなかったのに、今回は平気だったの?」 と聞くと、「僕は成長したんだよ。」 とのこと。今回の宿泊研修は、高校生活が始まったばかりで、ハードルが高すぎるかな・・・と心配していたのですが、乗り越えることができたと言っていいのではないかと思いました。

ある先輩お母さんに、「中学であれだけできなかったのに、なぜ今できるの?と思うことがたくさんあって、心配していた割にはなんとかなっている。」 という話をしたら、「母親ってつい先回りして心配してしまうけど、男の子って、節目節目で急に成長するようなところがあって、案外大丈夫なものよ。女の子はいつの間にか大人になってたって感じだけどね。」 と言っていました。

「確かにそういうところもあるなあ~」 と思いました。が、やはり、いろいろと難しいものをもっている息子の場合、中学校で先生たちの協力を得て自信を積み上げることができたこと、また、入学前に担任の先生と話せるようになっていたことも大きいと思いました。


題名: 親に手伝えることはもうないかも
投稿日時: 2007-07-14 15:08:21
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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◆ 高校1年 5月~

《自分から話しかけることができるようになる》

息子にはその後、気の合う友達ができ、携帯メールで連絡を取り合ったり、一緒に遊んだりするうちに、自然に話すことができるようになりました。
(詳しくは、かんもくネットの掲示板で紹介しています。)

実は小6のときの検査で、「アスペルガー障害型の子供への対応が必要。場面緘黙そのものを治そうとしてはダメ。」 という指導を受けてから、「息子はもう同年代の子と普通に会話することはないのではないか・・・」 と半分あきらめていた時期もあったのです。もし、話せるようになったとしても、自分から話しかけることは無理なのではないかとも思っていました。過去にアスペ傾向の子で、質問されたことには答えるけれど、自分からはいっさい話しかけない子がいたそうです。

中学3年のときに、修学旅行に参加できたことで自信をつけた息子が、「面接試験の練習をする」と いう名目でやる気になり、学校での会話練習がスタートしました。翻訳チームの皆さんが苦労して提供してくださったSMJ資料 (現在はKnet資料という名前に変更) を参考にし、この掲示板で、富重さんやけいこさんや皆さんにアドバイスをいただいて、息子の特徴も考えた上で、その時点では 「質問に対する応答」 「授業中の発声」 という目標に絞りました。

資料には、「年齢が上の子には認知行動療法」 が有効とありましたが、身近に専門家がいないので、その手法だけ真似て、先生たちやクラスメートに協力していただき、息子と相談しながらスモールステップで練習させていただくことができました。その結果、目に見える進歩は小さいものだったかもしれませんが、卒業までに大きな自信を得ることができました。

高校では、慣れない環境で後退することを覚悟していました。ところが、うれしいことに予想ははずれ、後退するどころか最初から声が出て、さらに友達ができたら、あっさり自分から働きかけることもできるようになりました。親の出る幕はほとんどなくなり、ずいぶん楽になりました。

きっと、発達障害傾向や場面緘黙で今苦しんでいる小学生や中学生の中には、高校進学をきっかけに飛躍的に改善する子がたくさんいるのでしょう。言葉が出なくてもいいから、中学校でいかに自信をつけるかが大事なんだと思います。それには中学校側の配慮が必要不可欠だとつくづく思います。


題名: 大事なのは周囲の理解と配慮
投稿日時: 2007-07-15 16:02:40
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
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《中学校側の配慮について》

中学3年での息子の取り組みは、そこまでたどり着くのに、長い時間をかけて先生やクラスメートとの信頼関係を築き上げてきたからこそ可能だったことです。そういう信頼関係や子供の自信が育っていない時に、安易に 「会話練習」 のようなことを提案するのは、逆に子供を傷つけることになるかもしれません。

私が皆さんに伝えたいのは、先生たちが息子を理解してくださって、本人の希望に沿って協力してくださったこと、周囲の理解が得られれば子供の自己評価はこれだけ変わるということです。(薬の影響もあり)

中学1年のときに 「ぼくはいない方がいいんだね」 と言っていた子供が、中学卒業間近になって、「僕は誰とでもうまくやれる」 といった自信を得て、「高校では何の支援もいらない」 と言い切れるようになりました。

実際、うちの子ほど中学校の先生に支援をしていただいた子は、そんなにいないのではないかと思っています。(3ページ目 11月10日以降書き込み)
柔軟な考えをもった担任の先生や教科担任に恵まれ、しかも担任は3年間変わらず、よけいなエネルギーを消耗することなく、3年間を通して一貫した支援を受けることができました。

これは、たまたまそうなったということではありません。小学6年生の時に児相で発達検査を受け、息子の特徴を知ることができ、児童心理の専門家 (小児精神科医) から的確な指導を受けることができたことが大きいです。(6ページ目 11月30日書き込み)

また、そのとき息子を担当してくださった児童福祉司の方が大変力のある方で、新年度体制が始まる4月に、自ら中学校へ赴き、学年主任の先生にわかっていただけるまで説明をしてくださいました。特に、「理解のある担任を」 というお願いは、保護者の立場で学校側に要求しても、なかなか受け付けていただけないことではないかと思います。息子が3年間お世話になった担任の先生は、情緒障害学級の経験のある先生でした。経験だけでなく、人柄という点でも素晴らしい先生で、生徒達にも保護者にも同僚の先生たちにも信頼の厚い先生です。

専門家との出会いには確かに当たり外れがあるようですが、だからといって全ての専門家が頼りにならないということではありません。数多くの事例を扱ったことのある頼れる小児精神科医が、(数は少ないと聞きますが) 日本にもいらっしゃいます。運悪く、はずれの専門家に深く傷つけられたとしても、めげずに根気良く別口を探すなどして、検査を受けることをお勧めします。小さいうちは見つけられなかった発達のアンバランスなどが、小学校高学年以降ははっきりと出てくることがあるようです。「発達障害」 などの診断結果が出なくても、子供の得意不得意を把握することができれば、学校側の支援を引き出しやすくなります。

学校で話せない子供たちは、困っているように見えなくても、助けを必要としていると思います。子供にレッテルを貼ることが検査の目的ではないですから、検査結果を恐れることはありません。検査を受けることで、先生たちからの理解が得られ、学校生活が少しでも楽になれば、それが子供たちの自信につながります。そして、苦手なことにもチャレンジしてみたいという意欲につながることもあるかもしれません。

うちの子は、アスペ傾向があるためか、家庭ではとてもわかりやすい子です。思ったことはその場でしゃべってしまい、(主に私に対して) 学校で起こったうれしかったこと、いやだったこと、普通なら友達同士の秘密で、親に話すべきではないようなことまで話してしまいます。家にいるときの息子は、かくしごとやうそが苦手で、しゃべらずにはいられないのです。不安なことがあれば怒りっぽくなり、ひどいときには暴れ出します。そのため、「子供がこんなことで困っている」 と担任の先生に相談し、助けていただくことが可能でした。

他の場面緘黙の子供たちは、学校でしゃべらないだけで、家庭では全く普通で、それほど問題視する必要がないように思われるかもしれません。でも、だからといって、そっとしておけばいいということではないと思います。子供たちは、誰にも理解されないまま学校に通い続けるだけで、深く傷ついてしまうかもしれません。「皆と同じにできない」ということを日常的につきつけられ、自己評価がとことん下がってしまうことを避けるためにも、中学校の先生たちに、Knet配布資料No.14に書いてあることをぜひ理解していただきたいと思います。

>この年代の子どもたちの場合は、「学力面でその子の持てる力を伸ばすこと」そして「社会とのつながりを保つこと」に支援の焦点を絞るべきです。
>大切なのは、どんなに小さな進歩にも目をやり、子どもの自信を失わせないことなのです!
>社会との結びつきを持ち、そのつながりを保つ支援をすることは、きわめて重要なことです。というのは、残念ながら、社会不安を感じやすい子どもはあまりに孤立しやすく、落ち込みやすいのです。

と資料にあるように、まず必要なのは「話す練習」ではなく、周囲の理解と支援だと思います。

息子が中学1年、2年の時は、Knet資料は存在していませんでしたが、担任の先生が息子にしてくださったことは、まさに資料No.14の(3)に書いてあるようなことでした。


題名: Re: 大事なのは周囲の理解と配慮
投稿日時: 2007-07-16 21:26:24
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とても重要なことが数多く指摘されていると思います。
そして、みちさんがおっしゃることには、どれも同感です。


Quote:

"みちさん"]専門家との出会いには確かに当たり外れがあるようですが、だからといって全ての専門家が頼りにならないということではありません。数多くの事例を扱ったことのある頼れる小児精神科医が、(数は少ないと聞きますが) 日本にもいらっしゃいます。運悪く、はずれの専門家に深く傷つけられたとしても、めげずに根気良く別口を探すなどして、検査を受けることをお勧めします。


これは私も反省しなければならないのですが、
ネット上では、場面緘黙を知らない専門家もいるなどと、
日本の専門家がとても低く評価されています。

ですが、みちさんがおっしゃる通り、
経験豊富な方は必ずいらっしゃると思います。
根気良く探したいです。
________________________________________
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http://atbb.jp/smjournal/viewtopic.php?t=11


題名: 富重さん、ありがとうございます
投稿日時: 2007-07-21 21:05:01
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登録日時:2013-10-18 04:45:31
投稿記事数: 255
富重さん、こんばんは。コメントうれしいです。

場面緘黙の克服方法に関しては、日本ではまだこれからだと思いますが、年齢が上の場面緘黙の子どもたちにとっては、「話せるようになること」 よりも、まず、学校でリラックスして過ごせること、自己評価が上がっていくことの方が大変なことが多いと思うので、専門家の方からは、そちらの方の指導を受けることが必要だと思います。

「ネットで資料を見つけました。」 とか 「本にはこう書いてありました。」 というだけでは、先生たちの理解を得ることは難しいです。「医師からこのような指導を受けました。不登校、心身症、うつなどにならないよう配慮をお願いします。」 といったことで、深刻な状況なのだということを訴えていかないとなかなかわかってもらえません。

日本でも、発達のアンバランスなどをみる検査方法などは確立されていて、それに基づいて学校での配慮を指導していただくことができるようですので、信頼できる専門医に相談することが大事だと思います。


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