情緒障害

概説

医学用語というより、日本の教育分野などで使われる行政用語。 特別支援教育においては、「状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう」と、文部科学省の資料『教育支援資料』にはあります。

また、特別支援教育に関する文部科学省の通知では 「主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの」 であると定められています。 かつては、これに自閉症が含まれていました。

コメント

特別支援教育に関する参考資料『教育支援資料』では、情緒障害で見られる行動問題が、内向性のものと外向性のものに分類されています。内向性のものは、緘黙、集団行動・社会的行動をしない、不登校、ひきこもりなどが挙げられています。また、指しゃぶりや爪かみなどの習癖、情動行動、抜毛などのうち、学校での学習や集団行動に支障を生じるほどのものも情緒障害に含めています。一方、外向性のものは、離席教室からの抜けだし、集団逸脱行動反抗暴言暴力、反社会的行動、非行、性的逸脱行為、自傷行動などが挙げられています。要するに、緘黙だけが情緒障害ではありません。

文科省の通知で自閉症が含まれなくなった時期は、2006年(平成18年)4月1日の学校教育法施行規則の改正からです。 自閉症を分けた理由について、文部科学省初等中等教育局長(当時)は、同年6月9日の衆議院文部科学委員会で次のように答弁しています。 「今回、これら選択性緘黙等の子供と自閉症の子供、双方の障害の原因や指導法が異なるということに着目をいたしまして、 情緒障害者の分類を整理して、自閉症者を独立の号として規定するということにしたものでございます」

「情緒障害」というと、情緒障害児短期治療施設という施設も思い浮かびます。ですが、情短施設には被虐待児が多く、ここでいう情緒障害は少し意味が違うようです。情短施設の支援対象者は、「心理的困難や苦しみを抱え、日常生活の多岐にわたって生き辛さを感じて心理治療を必要とする子どもたち」と情短施設倫理綱領にあります。なお、情短施設協議会は、情緒障害という用語は不必要な誤解や偏見につながるとして、情短施設の名称を「児童心理治療施設」に改めるよう国に要望しています。

情緒障害は英語だと emotional disturbance ですが、 海外で言う emotional disturbance と日本の情緒障害の異同にも注意が必要です。

1961年(昭和36年)の児童福祉法改正により、情短施設が設置されたことに由来する用語です。

リンク

◇ 教育支援資料(文科省 HP)

◇ 障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)(文科省 HP)

◇ 情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワーク