お勧め読み物

場面緘黙症の理解に役立つ読み物で、特にお勧めのものをご紹介します。 私の独断と偏見が混じっているかもしれませんが、ご容赦ください。

なお、ここでは緘黙のことを知って間もない方を念頭に、情報を絞ってお伝えすることに重点を置いています。 ここでご紹介していないものはお勧めできないという意味ではありません。

ウェブ上で読めるもの

NHK福祉ポータル「わざと話さないわけじゃない。専門家に聞く、場面緘黙(かんもく)について知っておきたいこと」

NHK福祉ポータル「ハートネット」には、緘黙の概説があります。 この説明を行なったのは臨床心理士で、緘黙児支援のための情報交換ネットワーク団体「かんもくネット」代表の角田圭子氏です。

NHKホームページ内「わざと話さないわけじゃない。専門家に聞く、場面緘黙(かんもく)について知っておきたいこと」新しいウィンドウで開く

かんもくネットの情報・資料

かんもくネットは、緘黙に関する情報・資料を豊富に提供しています。 かんもくネットのウェブサイトでは、保護者、教師、当事者、当事者の友達など、様々な関係者を対象とした情報・資料が公開されています。

かんもくネットウェブサイト新しいウィンドウで開く

「話すことがむずかしいあなたへ」

貴重な当事者向け読み物で、スモールステップで話せるようになるための取り組みの仕方をマンガで描いています。 行動理論が背景にあることが窺えます。具体的で分かりやすく、安心して読める作風です。

対象は、「今の自分を変えたい」「人前で話せるようになりたい」と思っている小学校中学年以上の当事者。 「症状が重い人や他の症状をあわせもつ人たちが読む資料として、適切でない場合がありますのでご注意ください」とのことです。

「話すことがむずかしいあなたへ」 (新しいウィンドウで開く

「緘黙症体験記集」

緘黙に関する非営利の任意団体・かんもくの会は、当事者や保護者などの体験記集を制作、公開しています。 多数の当事者や保護者からなるので、緘黙の多様性も分かると思います。

かんもくの会・緘黙症体験記集新しいウィンドウで開く

一般向けに、特にお勧めの本

緘黙の理解や支援に役立つ本は何冊もあるのですが、 これだけあると、どれを買えばよいか迷ってしまいます。 そこで、ここではそれぞれの本の違いを私なりにお話ししたいと思います。 私の独断と偏見によるものですが、ご参考になれば幸いです。

『場面緘黙Q&A-幼稚園や学校でおしゃべりできない子どもたち』

場面緘黙Q&A―幼稚園や学校でおしゃべりできない子どもたち 緘黙の理解、対応、実践の3章で構成されています。 分かりやすさに特段の配慮がなされており、読みやすい本です。 2008年の出版からある程度年月が経っているのが難ですが、ロングセラーとなっています。

この本は、バランスがよいです。 私の独断と偏見が入るかもしれませんが、一般の方で、最初の1冊に何を読むかを悩んでいらっしゃる方、 またはどれか1冊だけ読みたいという方には、この本をお勧めします。

お勧めの本(経験者の本)

『私はかんもくガール-しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常』

私はかんもくガール: しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常 緘黙を経験された方によるコミックエッセイです。

緘黙児がどのようなことを経験しているかが、可愛い絵柄で分かりやすく描かれてあります。 また、緘黙だった頃のことだけでなく、話せるようになった後にも、緘黙の経験が著者に影響を与えたことまで描かれてあります。

次の『かんもくって何なの!?』と併せて読んでもよいかもしれません。ただ、内容がやや重なっているかもしれません。

『かんもくって何なの!?-しゃべれない日々を脱け出た私-』

かんもくって 何なの!?: しゃべれない日々を脱け出た私 先ほどお話した「かんもく少女が同人BL漫画を描いて人生救われる話」を書籍化したものです。 こちらも、緘黙を経験された方によるコミックエッセイです。

「かんもく少女が~」に比べると、幅広い読者層を意識した構成に改められています。 また、書下ろしや、専門家による解説なども新たに加えられています。

一見『私はかんもくガール』と似た本のように思われますが、緘黙でどのようなことを経験してきたかには違いがあります。 私見ですが、こちらの本の方が対象年齢が少し上がるかもしれません。

『かんもくの声』

著者の緘黙についての経験や考えが、文章形式でまとめられています。 著者の文章表現力は高いです。 ただ、お子様が読むには、内容が難解だろうと思います。 また、著者の深刻な経験が、わりとストレートに書かれている印象です。

著者は当事者活動に携わる方で、緘黙と社会についての考えを書いた第5章には、その一面が現れています。 著者は緘黙に関わる方の間ではかねてより有名で、TwitterやFacebookページは、非常に多くの方がフォローしています。

お勧めの本(支援に役立ちそうな本)

『なっちゃんの声-学校で話せない子どもたちの理解のために』

なっちゃんの声ー学校で話せない子どもたちの理解のために 絵本です。おそらく主に子どもたちに場面緘黙症を理解してもらう目的で描かれたものだろうと思います。 それだけに分かりやすいです。

物語の主人公で、緘黙児のなっちゃんは、小学1年生という設定です。 絵本も、小学校低学年ぐらいの子どもが理解のために読むにはちょうどよさそうな内容です。

巻末には短い医学解説もあります。こちらは大人向けです。

『どうして声が出ないの?-マンガでわかる場面緘黙』

どうして声が出ないの?: マンガでわかる場面緘黙 緘黙の親子で読める本です。 全62ページのうち、5-26ページがマンガの部分です。 後半の保護者向けの内容が特にお勧めで、緘黙児を支援するための具体的な方策の数々が、 イラストつきで分かりやすく示されています。 全62ページと分量が少ないですが、要点がコンパクトにまとめられているとも言えます。

ただし、本書は緘黙症状が重い子や、緘黙以外の症状を併せ持つ子が読む資料として、 適切でない場合がありますので、ご注意ください。

『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド-アセスメントと早期対応のための50の指針』

イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド: アセスメントと早期対応のための50の指針 学校の先生を主な対象として、学校における緘黙への対応についてまとめています。

金原洋治、高木潤野両氏の共著ですが、ページ数にして8割ほどは高木氏が著したもので、同氏の専門性や緘黙に対する考え方が色濃く反映されています。

よく似た本に、この本の2年前に出た『学校における場面緘黙への対応-合理的配慮から支援計画作成まで』(高木氏著)があります。

お勧めの本(翻訳書)

『場面緘黙の子どものアセスメントと支援-心理師・教師・保護者のためのガイドブック』

場面緘黙の子どものアセスメントと支援──心理師・教師・保護者のためのガイドブック 北米の本を翻訳したものです。対象読者層が幅広く、内容もバランスがよいです。

行動療法が支援の中心ですが、親子相互交流療法や学外の心理相談室での集中的治療、動機づけ面接法、認知的介入など、多様な支援法を示しています。

翻訳書としては日本語が自然で、非常に読みやすいです。

『場面緘黙児への支援-学校で話せない子を助けるために』

場面緘黙児への支援―学校で話せない子を助けるために カナダの本を翻訳したもので、行動療法により緘黙児を支援する方法を詳細にまとめた実践的な本です。 対象読者は、場面緘黙症の子の保護者です。 『どうして声が出ないの?』で「スモールステップの取り組み」というものが示されていますが、 それを詳しくしたものと言えます。

この本の方法をそのまま実践するとすれば学校との連携が必要ですが、日本とカナダの学校制度には違いがあることから、 本書は日本の実情には合わないという声を聞くこともあります。 ですが、支援の参考には十分なるだろうと思います。

『場面緘黙支援の最前線-家族と支援者の連携をめざして』

場面緘黙支援の最前線:家族と支援者の連携をめざして イギリスの本の邦訳書です。 主にイギリスにおける緘黙支援や研究の動向が、多数の著者により多角的、総括的にまとめられています。

ページ数は280ページを超えており、これまで我が国で一般流通された緘黙の本としては、私が知る限り過去最大のページ数です。

原書は専門家や保護者向けに書かれてありますが、保護者にはやや難しめかもしれません。

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