緘黙症(mutism)

概説

緘黙。発声器官に器質的障害がないにもかかわらず、継続的に声が出ず、話ができない状態。 その多くは、特定場面で話ができない場面緘黙症ですが、 稀に全ての場面で話ができない全緘黙症もあります。

コメント

「緘黙」なんて難しい言葉です。いったい誰がどうして、こんな難しい言葉を、学校などで話さない状態を表すのに選んだのでしょうか。私が知る最も古い使用例は1940年の Gilbert Robin 著、吉倉範光訳『異常児』ですが、吉倉の翻訳が最初なのでしょうか。

「緘黙症」と呼ぶべきか、「緘黙」と呼ぶべきかは難しいところです。二大緘黙支援団体でも、かんもくの会は前者を、かんもくネットは後者を採用と、分かれています。『場面緘黙児の心理と指導』は教育家の立場から、緘黙症という呼び方を避けています。症をつけると医家の問題になるというのです。

「寡黙症」という言い方をする人が時々いますが、誤りです。「絨黙」とか「織黙」とか、誤植を見かけることも稀にあります。

なお、普通名詞としての緘黙という言葉の歴史は古く、西暦488年に成立した『宋書』范泰伝、日本では1348年頃に成立した『天柱集』にこの言葉が登場するそうです。明治時代には、有名な中村正直『自由之理』(J.S. ミル On Liberty の訳、現代で言う『自由論』)にこの言葉が見えるそうです。

リンク

◇ 「緘黙」という言葉について調べる(場面緘黙症Journal ブログ)