行動療法(behavioral therapy)

概説

学習心理学の立場による心理療法。 緘黙児への介入では多くの場合、敢えて緘黙児が不安を感じる場面で段階的に発話を促します。 緘黙児への介入としては古くから行われてきた方法の一つですが、 近年海外で顕著な発達を見せ、この方法が日本でも積極的に取り入れられてきました。 2007年以降に日本で出版されてきた緘黙の本は、ほとんど行動療法を大きく取り入れています。

コメント

* 以下引用 *

場面緘黙の形成機序にかかわる複雑な要因を考慮してみると、 本書に提示される方法で救われる子どもは、緘黙のごく初期で症状があまり重篤化していない場合に 限られるのではないかという点です。 必然的に子どもの年齢があまり高くなく、学年が進んでいないことが条件になるでしょう。 われわれが出会ってきた子どもたちの様子を心に思い描くと、 このような行動療法的場面設定で彼らの心の鎧を溶かすことができるのか、 悲観的にならざるを得ません。

* 引用終わり *

行動療法により緘黙児を支援する方法を紹介したカナダの本の翻訳書 『場面緘黙児への支援』において、同書の中で翻訳に携わった河井英子氏が、 行動療法の効果についてこうした悲観的な見方を示しています。

この記述は、どの緘黙サイトよりもアクセス数の多い Wikipedia「場面緘黙症」にも引用されています。 行動療法は低年齢の緘黙児にしか効果がないという認識が広がっていそうです。

ところが、『場面緘黙児への支援』の原書を著したマクホルム博士が これとは違う見方をしていることについては、あまり知られていないのではないかと思います。 同博士は、概ね17歳まではこの方法で可能と考えているそうです。 詳しくは、下記リンクをご覧ください。

※ 行動療法全般に関するコメントではなくなってしまいましたが、 今回のことは強調しておきたいので、こうしたコメントにしました。

リンク

◇ 特殊教育学会における緘黙症シンポジウムで強調されたもう一つのメッセージへの注釈(ほんとうは暖かい光が好き ~場面緘黙症との闘い~)