大井らの分類

概説

場面緘黙症の分類の一つ(大井ら、1979)。社会化欲求型、社会化意欲希薄型、社会化拒否型に分類されます。

社会化欲求型は、家族以外にコミュニケーションを自ら求めるもの(コミュニケーションの手段としての緘黙)。 社会化意欲希薄型は、家族以外にコミュニケーションを自ら求めようとする意欲に乏しいが、受動的には求めるもの(無気力な生活行動の一部としての緘黙)。 社会化拒否型は、家族以外にコミュニケーションを拒絶するかの如く求めないもの(コミュニケーションを避ける手段としての緘黙)。 同年、別の研究者から似た三分類が、偶然提唱されました(荒木、1979)。

大井らの分類は長く引用されてきましたが、近年、自閉症の概念が拡大し、 社会化意欲希薄型は自閉症スペクトラムの一部が含まれているのではとの指摘が出ています。

コメント

長く引用されてきたので、どこかで見たことがあるという方も結構いらっしゃるんじゃないかと思います。 「TypeI」「TypeII」「TypeIII」と言えば、ピンとくる方がいらっしゃるかもしれません。 最近では、goo ヘルスケア「選択性緘黙症」の項目で引用されていますね。 ただ、英語圏の文献で引用された例は見たことがありません。 国内限定で有名なのかな。

なお、自閉症スペクトラムを背景とした緘黙については、米国精神医学会や WHO が定める「選択性緘黙」からは除外されます。 つまり、DSM-5 や DSM-IV-TR といった診断基準(米国精神医学会)、ICD-10 による分類(WHO)では、これは選択性緘黙ではないことになります。

この分類のもう少し詳しい情報や、近年指摘されている自閉症スペクトラムとの関連については、 場面緘黙症Journal ブログ「goo ヘルスケアの選択性緘黙症分類」で書いています。

リンク

◇ goo ヘルスケアの選択性緘黙症分類(場面緘黙症Journal ブログ)

文献

◇ 大井正己、鈴木国夫、玉木英雄、森正彦、吉田耕治、山本秀人、味岡三幸、川口まさ子 (1979) 「児童期の選択緘黙についての一考察」『精神神経学雑誌』81(6)、365-389。