社交不安障害(social anxiety disorder)

概説

社交不安症。社交恐怖。社会不安障害。SAD。 社会的場面で他人から注目を浴びたり、否定的な評価を受けたりすることに対して 著しい恐怖を感じたり回避したりして、しかもそうした状態が長期間持続し、日常生活に支障をきたす障害。 緘黙児・者が合併している場合が多いことが研究の結果明らかになっています。

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■ 名称について

日本語名

社交不安症⇒社交不安障害⇒社会不安障害の順に、新しい名称です。 社交不安症の名称の定着はこれからでしょう。

SAD という呼び方もあります。英語の social anxiety disorder を短くしたもので、これも間違いではありません。

このほか、社交恐怖とか社会恐怖という名称もあります。前者の方が新しい名称です。

英語名

social anxiety disorder または social phobia。 最近では前者の名称の方が一般的ですが、後者も使われていますし、どちらでも間違いではないようです。

■ 社交不安障害と緘黙

研究によって多少違いもあるのですが、 緘黙児は社交不安障害を併せ持っている場合が多いという報告がなされています。 例えば、30人中29人(97%)が社交不安障害または回避性障害の診断基準に当てはまったという報告(Black et al., 1995)、 50人中全員(100%)が社交不安障害または回避性障害の診断基準に当てはまったという報告(Dummit et al., 1997)、 23人中15人(65%)が社交不安障害の診断基準に当てはまったという日本の報告(金原、2009) などがあります。

緘黙は社交不安障害の一つの症状ではないかとか、社交不安障害の極端なものではないかいう主張もなされています(Black et al., 1995; Dummit et al., 1997)。 緘黙と社交不安障害については学術文献上で様々な比較が行われてきましたが、 両者には異なる点もあり、まだ議論の最中でもあるので、現段階では両者はまだ分けて考えておいた方が無難かなと思います。 少なくとも、診断上は別物として扱われています。

文献

◇ 金原洋治(2009)「選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に-」 『日本小児科医会会報』38、169-171。

◇ Black, B.B., & Uhde, T.W. (1995). Psychiatric characteristics of children with selective mutism: A pilot study. Journal of the Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 34(7), 847-856.

◇ Dummit, S., Klein, R., Tancer, N., Asche, B., Martin, J., and Fairbanks, J. (1997). Systematic assessment of 50 children with selective mutism. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 36(5), 653-660.