通級による指導

概説

特別な支援が必要な比較的軽度の障害を持つ児童生徒を対象に、 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校または中等教育学校において、普通学級に在籍しながら、一部、障害の程度に応じて行う特別な指導。 この指導は、「通級指導教室」という特別な場で行われます。 場面緘黙症の児童生徒は、学校教育法施行規則と文科省の通知により、通級による指導の対象とされています。

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平成28年に制度改正

通級による指導は、平成28年度に制度改正が行なわれています。

これにより、平成30年度から高校での通級指導が始まりました。

また、その趣旨が明確化されました。 つまり、通級による特別の指導とは、障害による学習上または生活上の困難を改善し、または克服することを目的とする指導のことです。 これは、特別支援学校で言うところの「自立活動」に相当します。

年齢が比較的高い緘黙経験者には、馴染みが薄いか

通級による指導は、年齢が比較的高い緘黙経験者には、馴染みが薄いかもしれません。 通級による指導が全国の小中学校で制度化されたのは、1993年(平成5年)のことです(ただし、「ことばの教室」はそれ以前からありました)。 制度化移行後に小中学校時代を過ごされた方は、計算上、80年代前半生まれ以降の方です。 俗に言う「氷河期世代」末期以降の方でしょう。

通級指導の実際

実際のところ、どれだけの緘黙の児童生徒が、通級による指導を受けているのでしょうか。 文部科学省の「特別支援教育資料(平成26年度)」によると、通級による指導を受けている児童生徒数のうち、 緘黙を含む「情緒障害」の児童生徒は小学校で7,783人(10.3%)、中学校で1,609人(19.2%)とあります。 緘黙はこの「情緒障害」に含まれることから、これ以下の割合でしょう。

少し古い数字ですが、障害別により詳しく調べた実態調査があります。 平成18年度現在、情緒障害、自閉症、LD、ADHDを対象とした通級指導教室を設置している 全国の小学校及び中学校562校(小学校457校、中学校105校)を対象に行なった実態調査で、 回収率は小学校で70.0%、中学校で59.0%でした。 これによると、通級指導児童生徒のうち、緘黙の児童生徒は小学校で96人、中学校で18人で[注]、 割合としてはいずれも2%だったそうです。 なお、同じ年度の文科省「特別支援教育資料」によると、 緘黙を含む「情緒障害」の児童生徒は小学校で2,628人(6.1%)、中学校で569人(26.3%)でした。

通級指導教室の整備状況は自治体によって差があるかもしれません。 2014年12月14日(日)にお茶の水女子大学で行なわれた場面緘黙シンポジウムでは、 角田圭子氏(かんもくネット代表、臨床心理士)がこう話しています。 「私の勤務地の市では残念ながら通級指導教室が十分に整備されていません。 しかし、県外では多くの場面緘黙をもつ子どもたちが通級指導教室で支援をうけており 学校以外の交流や活動の場所としてとても効果的と思います」

通級指導教室に通う全ての緘黙の児童生徒が小学校で96人、中学校で18人だったということではありません。 この実態調査で回答があった人数がこれだけだったということです(回収率などの問題があります)。

リンク

◇ 学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)(文科省の通知。文科省HPへのリンク)

◇ 障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)(文科省の通知。文科省HPへのリンク)

◇ 「高等学校における通級による指導の導入について」(PDF 656KB。文科省HPへのリンク)

参考にしたもの

◇ 特別支援教育資料(文科省HPへのリンク)

◇ 小・中学校における自閉症・情緒障害等の児童生徒の実態把握と教育的支援に関する研究 -情緒障害特別支援学級の実態調査及び自閉症、情緒障害、LD、ADHD通級指導教室の実態調査から- (PDF 2.32MB。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所へのリンク)

◇ 場面緘黙シンポジウム「明日から活かせる場面緘黙児への支援」事前質問への回答(PDF 433KB。かんもくネットHPへのリンク)