緘黙は情緒障害?不安障害?

場面緘黙症の位置づけですが、かなり大雑把に言うと、以下の通りです。

○ 主に日本の教育分野では「情緒障害」

○ 英語圏では医学の視点から「不安障害」が共通認識、日本に広まる

場面緘黙症は情緒障害

場面緘黙症は情緒障害という説明を見かけることがあります。

情緒障害という用語は医学用語というよりはむしろ日本の行政用語で、特に教育分野で用いられます。

「情緒障害者」は学校教育法施行規則に出てくるのですが、これは、 「主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの」 と定められています。(文部科学省、2015)

日本では伝統的に緘黙児支援や緘黙に関する研究に、教育分野が深くかかわってきました。 例えば、緘黙が情緒障害教育の中で扱われたり、緘黙児が情緒障害児とされたりしてきました。 緘黙を情緒障害とする説明を見かけることがあるのには、こうした背景があるものとみられます。

場面緘黙症は不安障害

英語圏では、緘黙は不安障害とするのがほぼ共通の認識です。 この考え方は日本にも広く紹介されています。 こちらは教育行政ではなく、医学の視点からです。

2013年5月に改訂された米国精神医学会による診断・統計マニュアル(DSM-5)でも、 選択性緘黙(場面緘黙症)は不安障害と位置付けられました(American Psychiatric Association, 2013)。 DSM は、米国のみならず国際的に(日本も含む)大きな影響力を持っており、 今後日本でも緘黙を不安障害とする認識がさらに広まるかもしれません。

場面緘黙症は発達障害?

発達障害の二次障害としての緘黙(広義の緘黙)は別にすると、緘黙は発達障害ではありません。 ですが、発達障害者支援法では、理論上、緘黙は同法の対象とされており、 同法では発達障害として扱われます。(小枝、2008)

まとめ

大雑把に言うと、日本の教育行政の視点から言うと情緒障害、医学の視点から言うと不安障害です。

もっとも、緘黙の概念を巡っては議論があるのですが、 一般的な説明は以上の通りです。